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魵澤 信次(レ・アントルメ国立)
タルト・トロペジエンヌ Tarte Tropézienne

タルト・トロペジエンヌは、ガレット・トロペジエンヌともいいますが、サン・トロペという南仏の港町が発祥のお菓子です。ブリオッシュ生地にクレーム・ムースリーヌをはさんだ、フランス人ならだれの舌にもなじんだシンプルな味です。オリジナルには何も入っていませんが、知り合いのフランス人マダムが、トロペジエンヌにつぶした生のフランボワーズをどっさりかけてご馳走してくれたんです。その酸味が合うと思ったので、アレンジ版も作ってみました。フランス菓子って新しいものが次々に出てくるでしょう?芸術品のように美しいものも多いけれど、僕には毎日でも飽きない、こんな素朴なお菓子が一番に思えます。

クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ 想い出のお菓子 写真1 クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ 想い出のお菓子 写真2
   
1950年代、南仏サン・トロペのパン屋アレクサンドル・ミッカが考案したお菓子。ポーランドにルーツを持つ彼が、お祖母さんのお菓子を思い出して作った味だという。後に映画のロケで現地を訪れたブリジット・バルドーが大いに気に入り、このお菓子の命名者となった。

僕のお菓子人生の中で、やはり師匠の存在はとても大きいものです。ムッシュー・ルコントと島田進シェフに教わったことは、はかりしれません。フランス菓子の技術はもちろんですが、それと同じくらい、ある意味それ以上に、フランス人の嗜好やエスプリといった無形のものを見せてもらったような気がします。

当時は特にケータリングが盛んで、連日大量のお菓子を仕込んでいました。プティフールだったら2000~3000個が1単位で、それを3回転。一日でですよ。店売りと違って、その会の趣旨によって内容が違ってきますから、都度ボスがダーッとメニューを書き出すんです。品数が多くて最初は面食らうんだけれど、サレ(塩味)なアイテムから始まってお菓子は最後の方だから、僕らも慣れてくると、守備範囲(笑)である下5行あたりを見て準備したり。そんなときのお菓子はダッコワーズやプログレ、シュクセなど、いつもはお店に並ばないものも多くありました。

それからフランスに行き、菓子屋だけでなく、ショコラトリーやシャキュトリー(肉の加工品屋)でも働きました。直径が数十センチものボウルにいっぱいのフォワグラでパテを作ったりしていると、もう理屈抜きでフランスの「食」に対するエネルギーが伝わってくるんですよ。またフランス人家庭に世話になっていましたから、普段の生活に表れる彼らの価値観とかセンス、そんな「日常」を知るようになって、フランス・ガストロノミーをより深く理解できたように思います。

今も昔も大切にしているのは「基本」。それがなければ何も成り立たない。僕が流行にとらわれない「普段のお菓子」に惹かれるのも、そんな思いがあるからかもしれませんね。

クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ 想い出のお菓子 写真3-1 クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ 想い出のお菓子 写真3-2
魵澤シェフがフランスで学んだMOFクロード・ボンテ氏によるアントルメのパンフレット。80年代のものだが、今なお華やかさと気品が漂う
クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ 想い出のお菓子 写真4 ルコント氏による認定証
「89~93年シェフ・パティシエとして、非常に技術が高く、繊細で誠実な仕事ぶりを発揮した」ことを証明している。
 
 
魵澤 信次(えびさわ・しんじ)
1958年東京都生まれ。16歳で洋菓子店に入る。その後「ルコント」で故アンドレ・ルコント氏の薫陶を受け、フランス「エコール・ルノートル」「ジャン=ポール・エヴァン」「ル・プティ・ブーレ」などで多岐にわたり修行。
帰国後「ルコント」を経て、93年「レ・アントルメ国立」オープン。
 
   
クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ 想い出のお菓子 店の写真 レ・アントルメ国立
東京都国立市東2-25-50
Tel : 042-574-0205
10:30~19:00 水曜休

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