伝統菓子・地方菓子- Traditional confectionery -

伝統菓子・地方菓子

●サントノレ2015年07月30日

サントノレ Saint-Honoré
円盤状のブリゼ生地の縁にシュー生地を重ね、さらに小さなシューで周りを飾って、中をクリームで覆ったお菓子。考案者は1840年代にパリのサントノレ通りに店を構えていたシブーストである。その形は真珠飾りのついた王冠をイメージしたといわれ、当初はすべてをブリオッシュ生地でつくって、中にはクレーム・パティシエールや時に生クリームを詰めたという。ところがこのお菓子には、クリームが生地を湿らせてしまうという欠点があった。そこでシブーストのもとで働いていた職人の一人、オーギュスト・ジュリアンは、修行を終えてオトゥール、ナルシスの兄弟とともに「メゾン・ジュリアン」を興した際、この問題点を改善すべく、ブリゼ生地に、別に焼いたシューの小さな玉をカラメルで固定するという、現在のスタイルを考案したのである。その後、シブーストの店でも“クレーム・シブースト”が生みだされ、サントノレに使われるようになった。「サントノレ型」と呼ばれる独特の口金で、チューリップの花弁のように飾り絞る真ん中のクリームは、現在では生クリームが使われることも多い。

○用語・人名解説
クレーム・シブースト crème Chiboust
バニラの香りをつけたクレーム・パティシエールにゼラチンを加え、卵白と熱いシロップでつくったムラング・イタリエンヌ(イタリアン・メレンゲ)を合わせたクリーム。かつては火を通さないメレンゲ(ムラング・フランセーズ=フレンチ・メレンゲ)を用いていたが、科学の発達により衛生上の問題が指摘されて、現在の製法となった。

エーグルドゥース 寺井則彦
やわらかなクリームの味わいと、生地のパリッと感がバランスよく楽しめる。シューの中のクレーム・フランジパンヌでほどよいコクを、飾り絞る生クリームで軽さを出している。