伝統菓子・地方菓子- Traditional confectionery -

伝統菓子・地方菓子

●スフレ・グラッセ2015年07月30日

スフレ・グラッセ Soufflé glacé
スフレとはもともとカスタード・クリームにメレンゲを加えてココットなどに流し、卵の力で背高く膨らんだ焼きたてを熱々のうちに食べるデザートである。この形状をそのままに、アイスクリームで冷たく仕立てたものがスフレ・グラッセ。冷菓はイタリアで発達していくが、その源はマルコ・ポーロが果汁を凍らせて飲む習慣を中国から持ち帰ったとも、果汁やミルクを凍らせるアラブ圏のものが伝わったともいわれている。いずれにせよ、15世紀後半につくられた、半ば飲み物のようなシャーベット状のものがカトリーヌ・ド・メディシスによってフランスに入り、17~18世紀には貴婦人たちのお気に入りとなっていく。徐々に宮廷料理人やカフェのパティシエたちが、卵黄や生クリーム、メレンゲなどを加えるつくり方を考案。ことにアントナン・カレームは、アイスクリームにコーヒーの風味やフルーツを加えて、見た目も生クリームなどで華麗に飾りつけたものを編み出し、このデザートは「パルフェ(完璧な)」と呼ばれて、貴族の宴卓を華やがせたのである。

○用語・人名解説
カフェ・プロコープ café Le Procope
1675年シチリア出身のフランチェスコ・プロコピオ(のちにフランソワ・プロコープと改名)は、パリに念願の自分の店を開いた。ルイ14世治世の華やぎのあるパリで、商売熱心な彼は自分のカフェに日々のニュースを貼り出すことを考案。これが文化人を集わせて「ル・プロコープ」は文化発信スポットとして名をあげていく。一方で長年宮廷不出とされていたアイスクリームの製法がイタリアから伝わり、これにいち早く目をつけたプロコープは、卵や生クリームを加えてアレンジ。人気カフェの看板メニューとして瞬く間に流行した。「ル・プロコープ」は現在でもパリ6区アンシエンヌ・コメディ通りにレストランとして存在している。

ノリエット 永井紀之
卵と生クリームのやわらかなコクに、グランマニエを効かせて、インパクトのある大人っぽい味わいに仕上げている。