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活動報告- Activity Report -

パリガレット・デ・ロワコンクール参加2008年01月 Vol.1-2

今年も、Chambre professionnelle des artisans boulangers-pâtissiers (通称パリパン菓子組合、会長 ジャック・マビーユ)主催ガレット・デ・ロワコンクールが行われ、クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ主催ガレット・デ・ロワコンテスト2006年度優勝者濱中友紀さん(アトリエ・ドゥ・ママン)が参加しました。今年20周年を迎えたパリのガレット・デ・ロワコンクールには、、クラブからお祝いの言葉と記念品が贈呈され、マビーユ会長からは「ガレットを通して日本とフランスがより親密になれることをうれしく思う」という言葉をいただきました。

ガレット・デ・ロワコンクールレポート
松浦恵里子(在パリ理事、食ジャーナリスト)

 パリパン組合エピファニー協会が主催する第20回ガレット・デ・ロワコンクールが1月3日、パリの職業学校EPMTTHで行われ、日本から2006年度の優勝者、濱中友紀さん(アトリエ・ド・ママン)が特別参加しました。

このコンクールはパリを中心とするイルドフランス地方のパン・菓子店を対象としたもので、経営者、従業員、見習いの3部門に分かれて審査され、各部門の上位30名が表彰されます。
今回は総勢330人が参加しました。
審査に当たったのは昨年より20人多い105人。これは1人の審査員が試食する量を減らして負担を軽くし、できるだけ公平な採点ができるよう配慮したためです。
濱中さんはパイ生地を日本で作って持参し、パリの人気ショコラティエ「ジャン・ポール・エヴァン」のラボを借りてガレットを完成しました。

日本からは濱中さんが働くべーカーズ・プロダクションの今本美智雄社長、クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ事務局長、田尻泉さん、理事の大森由紀子さんが来仏しパリで濱中さんをサポートしました。
特別参加した濱中さんは公式な順位付けはされませんでしたが、経営者部門(パン・菓子店の主人)のガレットの中で17位に選ばれ、主催者から大変な実力があると賞賛されました。

今年はコンクール創設20周年に当り、日本のクラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワを代表して大森由紀子理事が挨拶し、パン菓子組合ジャック・マビーユ会長に20周年を祝う記念品とクラブの名誉会員証書を手渡しました。
また、過去最多出場,最多入賞のジャッキー・ミルソン氏とレミー・ポテ氏に「20周年特別賞」が贈られました。
コンクールについて濱中友紀さんは「パリに来てからガレットの技術的アドバイスを色々いただいて戸惑いましたが、後悔しないように自分のやり方を通しました。その結果17位と評価されたので満足しています。コンクールは堅苦しくなく楽しい雰囲気でした。」と感想を語っています。
またベーカーズ・プロダクションの今本美智雄社長は「パリのガレットは日本と色も形も違い、皆が自由に作っているという印象でした。コンクールの様子が分かったので、この経験が今後出場する人への助けになればと思います。ガレットは奥が深い。何年やっても上には上がありますね。」と印象を述べました。

経営者部門の優勝者ティエリー・ルピヌ氏をパリから30キロ西のサンジェルマン・アン・レイ市に訪ねました。
「ガレットコンクールに参加したのは今回が初めて。コンクールの前日まで参加することは考えていなかったので、店に出す為に作ったものをそのまま持参しました。」コンクールの為に特別に作ったものではないとルピヌ氏は強調する。
突然参加を決めたのは、同じ市内でパン店を営む義兄のフィリップ・グレ氏の誘いだったといいます。今回のコンクールで義兄のグレ氏は2位に選ばれ、誘われたルピヌ氏が優勝という意外な結果になりました。
美味しいガレットを作るには何が大切かとの質問に「しっかり作ったパイ生地と重くないアーモンドクリーム」という答えが返ってきました。ルピヌ氏は無口で控えめ、技術や材料について自分の考えを滔々と述べることはしません。
この道に入って20年になるティエリー・ルピヌ氏は既にベテランですが、独立したのは2年半前。昨年秋にパン職人を一人雇うまでは店のお菓子もパンも全てルピヌ氏が一人で作っていました。今でも店に並ぶ製品はどれもルピヌ氏の目の行き届いた丁寧な仕上がりのものばかり。店は市の中心から離れた場所あるので、将来は市の中心にもう一店出店するのがルピヌ氏の夢です。

コンクール優勝のお陰で1月半ばに既に前年の50%増、900個のガレットが売れたという。値段は4人分11ユーロ(約1,750円)、6人分16ユーロ、8人分21ユーロとパリと比べるとかなり安い。

Thierry Lepineux
30, rue Jean Jaurès
78000 Saint-Germain-en Laye

パリガレット・デ・ロワコンクール報告
(クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ理事 大森由紀子)

 今年もパリのガレット・デ・ロワコンクールが、去る1月3日に行われた。今年チャレンジしたのは、昨年の日本の優勝者、濱中友紀さん。彼女は1日に日本を発って、今回ガレットの製作場所を提供してくれたジャン・ポール・エヴァン氏の厨房に2日から入り、翌日に備えて準備をした。エヴァン氏の厨房のスタッフはみな始終協力的で、濱中さんも緊張がほぐれたことだと思う。3日は、お昼ごろに会場に足を運び、ガレットを展示させてもらう。約300台のガレットが騒然と並べられ、その日のうちに80名の審査員によって評価されるのである。発表は、翌日4日の夜。アプランティ部門、コミ部門とそれぞれ30位から発表があり、濱中さんは、みごとパトロン部門で、17位を獲得。ご本人はやや不満の結果だったようだが、パトロン部門で17位ということは、300人中17位に相当する。パリのプロたち競合を相手に、すばらしい結果だったと思う。

今回、パリのコンクール出場にあたって、作品を作る際気をつけたことは、焼き色を控えめにしたことである。最近のフランスの焼き菓子の傾向を見ていると、焼き色が必ずしも強ければよいというものではないようである。実際、パリのお菓子屋さんで出回っているガレット・デ・ロワを観察しても、優しい焼き色に仕上がっているガレットが目立つ。大きさも、小さめのものが売れるようで、アンディヴィデュエル(一人前)を売る店も増えている。

パリのガレット・デ・ロワコンクールは、今年20周年をむかえたこともあり、表彰式はより賑わいをみせていた。私たち日本のガレット・デ・ロワクラブからも、お祝いの言葉とともに、記念品をパリ、パン組合会長マヴィーユ氏に差し上げた。ガレットを通して日本とフランスがより親密になれることをうれしく思うという会長のお礼のことばをいただいた。

当クラブでは、今年から名誉会員として、パティシエのピエール・エルメ氏とショコラチエのジャン・ポール・エヴァン氏を迎えることになった。お二人からは、「ガレット・デ・ロワというフランスのすばらしい伝統を日本でも守り、そして広めてくれることをうれしく思う。このお菓子を通して、フランスと日本の友情がパルタージェ(分かち合える)ことを末永く願う」というメッセージもいただいた。
ガレット・デ・ロワクラブも一歩一歩、着実に成果を残し、友情の輪を広げつつあることをうれしく思う。

濱中友紀さん(アトリエ・ドゥ・ママン)コメント

330品中17位という成績でした。自分としてはまだ納得のいくものではなく、今回現地でたくさんのガレットを見る機会を得て、ますます意欲を強くしました。コンクール参加にあたり、たくさんの方々にご協力頂きましたことに、お礼申し上げます。