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伝統菓子・地方菓子

●ガトー・グラッセ・オー・フォンダン2015年07月30日

ガトー・グラッセ・オー・フォンダン Gâteau glacé au fondant
「ピティヴィエ」といえばフィユテ生地(折りパイ生地)にクレーム・ダマンド(アーモンド・クリーム)を詰め、表面に放物線状の模様をつけて焼いたお菓子。ガレット・デ・ロワと混同されやすいが、ピティヴィエは生地を高く立ち上がらせ、表面の模様は放物線をぐるりと描いたものとされている。このピティヴィエは16世紀にすでに出現していたが、それよりもはるか昔、7世紀にもピティヴィエと呼ばれるお菓子があった。フィユテ生地のピティヴィエと区別するため、現在では「ピティヴィエ・グラッセ」(糖衣をかけたピティヴィエ)または、「ピティヴィエ・ア・ランシエンヌ」(昔のピティヴィエ)などと呼ばれている。

この別名が今回紹介するガトー・グラッセ・オー・フォンダン。アーモンドの風味をたっぷりきかせて、しっとりと焼き上げ、周りを糖衣(フォンダン)で覆った、口どけのやさしいお菓子だ。とろけるようなキメの細かさは、フィユテ生地のさっくりとしたピティヴィエとは対照的のようだが、どちらも豊かなバターのコクとアーモンドの風味が際立って、シンプルな中にもフランス菓子の真髄を現したお菓子といえる。因みにピティヴィエは、ロワール地方の、このお菓子の発祥の地である町の名前。現地では新旧2種類のピティヴィエが、今でもパティスリーのウィンドーを飾っている。

○用語・人名解説
アーモンド amande
原産は西アジア。文明の発祥地である地中海沿岸から中央アジア、北アフリカへと広がり、古代から料理やお菓子に使われてきた素材である。ローマ人たちはすでにアーモンドに一粒ずつ糖衣をかけ、それで果物を覆って飾っていたという。ローマ人の進出とともにヨーロッパ全体に広がり、庶民レベルに浸透したのは17世紀のこと。大きく分けてスイートとビターがあるが、食用となるのはスイート。香りはよいが毒性があるビターは香料とされ、中世には皮の手袋にこれを染みこませるのが貴婦人の間で流行ったという。

フォンダン fondant
シロップを115℃に煮詰め、冷却して攪拌したもの。1824年に考案され、1830年にはグラサージュ(フォンダンでお菓子や果物を覆うこと)が行われた記録がある。

パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウ 藤生義治
シンプルな姿だが素材の味わい、豊かな香り、やさしい口どけが印象的。藤生シェフがフランス修行時代に地方のガレット・コンクールで出会い、パリにはない味と感動したお菓子。