伝統菓子・地方菓子- Traditional confectionery -

伝統菓子・地方菓子

●ガトー・ナンテ2015年07月30日

ガトー・ナンテ  Gâteau nantais
名前につけられたナントはブルターニュとロワールが交錯するフランス西部の都市。大西洋に注ぐロワール川の河口に近く、16世紀より砂糖や香料、タバコなどのアフリカや西インド諸島の生産物を輸入する貿易港として栄えた。ガトー・ナンテはこの町が繁栄の極みにあった18世紀に、あるフアシエ(フアス=ロワール地方のパン菓子、を作る職人)によって作られたといわれる。当時はバターは使われずアーモンドが主体だったが、青レモンの皮とバニラ、“アンティル諸島(西インド諸島のひとつ)の”と明記されたラム酒が入るなど、貿易の富を感じさせるエキゾチックな配合だった。20世紀初頭になって、土地の家庭婦人のおもてなし菓子として現在のものに近い配合となり、あわせてパン屋のお菓子として発展してきたという。

○用語・人名解説
ナント Nantes
熱帯産品をヨーロッパに中継したことのほかに、アフリカ奴隷貿易が繁栄の要因でもあったナント。その資本力は工業、造船業、運輸業などの発展を促し、早くから産業が栄えた。フランスでは知らない人のない大手製菓メーカー「LU」のロゴでおなじみのルフェーヴル・ユーティル社(現ダノン社)も、ここを本拠地とした企業のひとつ。同社の看板商品であるビスケット“Petit-Beurre”に刻まれた“NANTES”の文字に、その栄華をとどめている。