伝統菓子・地方菓子- Traditional confectionery -

伝統菓子・地方菓子

●マドレーヌ2015年07月30日

マドレーヌ madeleine
マドレーヌの誕生については諸説あるが、一番有力とされているのは、18世紀にポーランドを追われてフランスに逃れ、娘婿であるルイ15世のはからいにより当時のロレーヌ公国を治めていたスタニスラス・レクチンスキー公によるというものだ。

大宴会の当日に、宮廷の菓子職人が不意にやめてしまうアクシデントが発生。そこを若い召使女が即興で作ったお菓子で切り抜け、その出来ばえがあまりにすばらしかったため、彼女の名である「マドレーヌ」として定着したという。これには後日談があり、マドレーヌのレシピは長いこと“宮廷外秘”とされていたが、この地方のコメルシー村に住むある菓子屋が、大金と引き換えに入手。以来、マドレーヌはコメルシーの名物となり、ブナの木の皮でできた楕円
形の箱とともに有名になっていくのである。

○用語・人名解説
スタニスラス・レクチンスキー Stanislas Leczinski
ポーランドの王位に二度もつきながら亡命を余儀なくされた不運の為政者。しかし娘マリアをフランスのルイ15世に嫁がせた縁でロレーヌ公国の主となり、“ロレーヌのヴェルサイユ”リュネヴィルの城で穏やかな隠居生活を送ったという。生来の美食家で自ら考案した料理や菓子も多く、マドレーヌやババ誕生のストーリーに彼の名は欠かすことができない。

オ・グルニエ・ドール 西原金蔵
西原シェフのめざすマドレーヌのイメージは、“強い主張をしないニュートラルな味の焼き菓子”。シンプルなのに印象的なのは、やわらかく豊かな風味と口どけのよさ。飽きずにいつでも帰ってきたいような味わいだ。