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2010年8月

永井 紀之(ノリエット)2010年08月31日

夏休み中の8月21日、代官山のル・コルドン・ブルー開催された、小学生パティシエ選手権の審査員をしてきました。

今年で6回目になるこのコンクール、全国から762通の応募の中からまず書類審査で入賞50人を選び、その中から上位10名が決勝大会に出場し、当日コルドン・ブルーの厨房で2時間半かけて自分の夢をイメージしたオリジナルのお菓子を作り、テーマ、アイデア、デザイン、完成度、味などを総合的に審査して、今年の小学生パティシエ選手権チャンピオンを決めるという大会です。
とまあ、これが概要ですが、今年の10名は、2年生が3人、3年生が1人、5年生が2人、6年生が4人となっていて、男の子は1人だけでした(う~む、業界の未来は暗い? 否、やっぱり女の子の方が夢見がちなのでしょう)。
この大会は、文部科学省、農林水産省の後援を受けていて、食育の一環でもあり、食材への関心、作る喜び、食べてもらう喜び、家族とのコミュニケーション機会を増やすなど、食育の機会を家庭で作るのも目的の一つになっています。

今年に限った事では無いけれど、子供が夢をイメージしたお菓子を形にするべく、家族が一致団結し練習を重ね、大会当日まだ幼い小学生が、一生懸命お菓子を作っている姿は、それが食育になっているかどうか疑問は拭えないにしても感動的です。特に2年生の子が時間内に仕上がらず、終了時間と同時に泣き出した時には、まだ幼い子供ながらその思いの強さに胸が絞め付けられるようで、思わず(良いんだヨ!)と抱き締めたくなりました。
大会のキャッチフレーズ≪きっとできるよ!≫は夢があって良いけど、現実はそんな甘っちょろい物ではなく、親子共々真剣勝負の戦いです。

審査員も真剣にやらないと夜道が怖いことになりそうなので、優劣を付けづらいところ、心を鬼にして採点します。毎年ゲスト審査員がいて今年のゲストはポニョの大橋のぞみちゃんでした(食育と何の関係が有るんだろう?頑張っている小学生同士と云うことですか)。さすがに審査は出来ないので応援と云う事で来てくれました。昨年は、ポタジエの柿沢シェフ(これも今一のような気が・・・まぁ分かり易い夢が有ると云う事ですか)。一昨年はその年の日仏親善大使だった滝川クリステルさん(これは何の問題もなく最高です)。閑話休題。

女子栄養大学学長の香川芳子先生ほか6名のシェフ審査員(西原シェフ、江田シェフ、辻口シェフ、ドミニク・グロシェフ、柿沢シェフ、私)、関連企業の代表の方4名により、唯一の男の子、深谷颯汰君がチャンピオンに決まりました。
深谷君は、11歳にして(ジャズの似合うケーキ屋さんを開きたい)と云う渋い夢を持っているので、優勝者に贈られるフランス・パティシエ体験の旅で、新たな経験することで今後に期待したいと思います。

食育という言葉を耳にするようになって久しいです。僕にとってそんなものは人としての教育に含まれているもので、取り立てて騒ぐほどの事では無いと思っていましたが、最近頓に騒がしい。もし本当に必要なら、くだらない知識なんかより野良仕事をする事が一番手っ取り早いとも思っています。食に関わる仕事をしている身としては、人が皆、脳味噌でものを食べるような社会にはなってほしくありません。
(2010.08)