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2010年12月

金子美明(パリ・セヴェイユ)2010年12月31日

フランスから帰国してからの7年間、愛着をもって住んでいた、駅から徒歩20分、築45年の広い庭のあるおんぼろ一軒家が取り壊されることになり、最近引っ越しをしました。
7年間….今考えてみれば、朝早く家を出て帰ってくれば夜も決して早いとはいえない時間、当たり前の生活と睡眠のための家だったけど….やっぱりあのおんぼろ屋敷は僕のお気に入りでした。

食器棚では妻の朝晩がひしめき、本棚の中には未だに15歳の僕の好奇心が広がり、そして“娘のおもちゃ箱”には彼女の4年間がひろがっている。そう、この7年の間に娘も授かりました。
念願だった娘が生まれた時、いまどき生まれるまでどちらか聞かずに子供を産むなんて、と思いながら結局聞かないまんま、生まれた時に女の子と聞いて、思わず涙も我慢できずガッツポーズをしたのを思い出します。あんなこともしてあげよう、こんなこともしてあげたい、一つ何かを決めて娘のために続けよう….どれも実行できてません。まだ2歳の小さな娘を昨日のことのように思い出せるのに、娘はすでに4歳。いつのまにか上から目線で、「お父さん濡れたタオルはくしゃくしゃで置いといたらダメ!!」、「お母さ~ん、お父さんいつまでたっても起きない!!」
未だどんなふうに子供を育てれば良いのだろう….わかってないお父さんです。

先日引っ越した家で久しぶりにたった一人になることがあり、なにげに娘の“おもちゃ箱”を開けてみました。生まれた時にはためになるおもちゃを買ってあげようとか、流行ものは買わないなどと思っていたはずなのに、そんなにうまくはいきません。今流行のハートキャッチプリキュアのバックやキャラクターものたち。でもそんなものと一緒に娘が大好きな折り紙や、捨てるチラシで創った手作り計算機やら携帯電話やらテレビのリモコンやら….娘の4年間がいっぱい詰まっているのだなあと思いながら、自分の心配などよそに、ちゃんと娘の人生が詰まったその箱に一人感動しました。

娘には自分の好きなものを見つけて欲しい、そして自由にのびのびと生きて欲しい、そう望みます。自分が子供のころ、親が自分のために連れて行ってくれた東映まんが祭りや遊園地の仮面ライダーショーより、我慢して連れて行かれたフランス映画『凱旋門』や『風と共に去りぬ』、我慢できるか心配されながら連れて行かれたクラシックコンサートやバレエの方が、いつしかずっとずっと力強く心に残り、今の自分の好きなものに変わっています。

今年のクリスマスプレゼントは、ハートキャッチプリキュアのココロパフュームをサンタさんにお願いすると言ってました。でも自分の親が連れて行ってくれたすばらしい映画やコンサート、ミュージカルや演劇のように、いつまでも心に残る美しいものが好きな子供に育ってほしいと、おもちゃのように興味をもってくれたらと、少しだけ親の願いもこめ、安い子供用のヴァイオリンをプレゼントしました….もちろんハートキャッチプリキュアの“ココロパフューム”と一緒に。
(2010.12)