●クグロフ(独クーゲルホップフ)2015年07月30日
クグロフ(独クーゲルホップフ) Kouglof / Kugelhopf
アルザス地方を代表する発酵生地のお菓子。国境に接するこの地方は、戦争のたびにフランスとドイツを行き来した歴史を持っており、従ってクグロフはドイツ語圏で広く作られているお菓子でもある(ただし一部地域では同じ形状だがバターケーキ生地のもの)。ドイツ語で「クーゲル」は「玉」、「ホップフ」は「ビール酵母」の意。フランスにはマリー・アントワネットが祖国オーストリアから伝えたともいわれているが、もっと古い、別のストーリーもある。キリスト誕生を祝うために東方に出向いた三聖人が、一夜の宿をアルザス・リボーヴィレ村の陶器職人に借りた。翌朝彼らはその家にあっためずらしい形の型でお菓子(パン)を焼いて返礼とし、それがクグロフの始まりである、というもの。真偽のほどはさておき、リボーヴィレ村では今でも毎年6月にクグロフ祭りが行われていること、斜めに筋が入り中央が空洞になった陶製の型で作られ続けていることは、揺るぎない伝統であり、バターたっぷりのふんわりと温かな味わいは、人々を魅了し続けている。
○用語・人名解説
クグロフ型 Moule de Kouglof
アルザスのお菓子屋やパン屋のウィンドーに、必ず飾られている大小のクグロフ型。青やカラシ色などの地に草花を描き、釉薬をかけて仕上げられた、いかにも郷土色豊かなアルザスの象徴だ。似たようにみえる模様だが、実は窯によって異なり、それは工房の「サイン」なのだとか。菓子・パン職人たちが毎日使うのは素焼きの型だが、何十年も使い継がれて真っ黒に変色した姿は、まさに伝統の重みを感じさせる。