●スペキュロス2015年07月30日
スペキュロス Spéculaus
ベルギーから北部フランスにかけて、古くからみられるスパイス・クッキー。サクッとしているが、サブレなどよりずっときめの細かい、口どけのよい生地質である。
レリーフのような独特の焼きあがりは、模様をつけた木型に生地を押しはめてかたどる製法によるもの。型は小さなピースから大きいもので数十センチにも達し、それらは手彫りの職人が減る中で、貴重品になりつつある。聖人を模した図柄が多いのは、このお菓子がもとは12月6日の「聖ニコラの日」を中心に出回っていたためである。因みにかつては若い男性から女性へのプレゼントに使われていたとか。またこの地帯は砂糖の産地で、スペキュロスにも特産のヴェルジョワーズが使われている。まろやかでコクのある甘みは、シナモンやクローヴなどのスパイスとも相俟って、より深みのある風味を醸している。
○用語・人名解説
ヴェルジョワーズ vergeoise
砂糖の原料として主なものはサトウキビとサトウダイコン。前者は温暖な地域に、後者は寒冷地で育つが、ビートともよばれるサトウダイコンからつくられているのがヴェルジョワーズである。サトウダイコンから砂糖の結晶を取ったあとに残った糖液を、再度結晶化してできたもので、砂のように粒が細かく、しっとり湿り気をおびている。製糖1回目の残り糖液からできた薄茶色の「ブロンド」と、再度煮詰めたものから取る茶褐色の「ブリュンヌ」がある。
ノリエット 永井紀之
パリッと割れて、あとはほろほろとした食感。立ち上るスパイスの風味が、ヴェルジョワーズの温かな甘さに包まれて、シャープすぎず上品に表現されている。