伝統菓子・地方菓子- Traditional confectionery -

伝統菓子・地方菓子

●ガトー・バスク2015年07月30日

ガトー・バスク Gâteau Basque
ジェノワーズとシュクレ生地の中間、半生菓子のような食感の生地に、ブラック・チェリーのジャム、もしくはクレーム・パティシエールなどが詰められている、バスク地方に伝わるお菓子。

現地ではマンケ型を用いて厚めに作る、薄くのばした生地を円形に二枚を重ねて高さを出さずに焼くなど、作り手によって形状はさまざまだが、いずれも変わらないのは直径20センチを超える大きさであること、そして表面に印された十字架模様。この模様は土地に伝わるシンボル・マークで、太陽・水・地・火を表し、自然とともにある人間の生き方を示したものだという。17世紀の末から作り続けられており、当初はトウモロコシ粉に豚の脂、ハチミツが原料。徐々に小麦粉やバターに替わり、名産のブラック・チェリーの他に、イチジクやプルーンなど、土地で採れる素材をふんだんに使って作られるようになった。そしてガトー・バスクがパティスリーの商品となるに連れて、クレーム・パティシエール入りのもの、チョコレート風味のものなどが出現し、味わいもふんわりとキメの細かいものから、粉や砂糖の粒がざっくりと感じられるようなものまで、今ではさまざまなスタイルで愛好されている。リゾート地として人気のバスク地方、夏のシーズンには一日300~400台のガトー・バスクを焼くパティスリーもあるとか。

○用語・人名解説
ブラックチェリー=スリーズ・ノワール cerises noires
ガトー・バスクは本来、チェリーのジャムを詰めて焼くのがオリジナル。この地域では古くから防風や敷地の境界線として桜の木を植える風習があり、特にイッツァスー村(イグザスーとも表記される)は、ブラック・チェリーの名産地として有名である。初夏の収穫後、ジャムを始めとして、キルシュ漬けやリキュールなど、多くの加工品も生産されている。

メゾン・ド・プティ・フール 西野之朗
クレーム・パティシエールに栗の渋皮煮が入ったアレンジ・バージョン。しっかりと焼けた生地の香ばしさに、ほっこりとしたクリームが温かな印象。